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2005 年09 月13 日

建築紛争

今日は建築紛争、建築瑕疵、いわゆる欠陥住宅の話。

建築瑕疵事件は、施主側・施工業者側のいずれにも代理人として関与したし、調停官としても数件は関与したが、やっぱり難しい。今日、不調に終わった事件も難しい事件の最たるものだ。調停官としての本音、グチかもしれないが、少し言っておきたい(当事者には理解してもらえないが)。

事案は、築10年になる木造2階建て住宅。数年してから外壁にクラックが入り、最近になって屋根瓦から錆の漏出が甚だしく、ついに数枚屋根瓦が割れて落ちた。建築士の設計する住宅ということでデザインはきれいだ。ところが、実際の施工業者も、当の建築士も倒産していなくなった。
何が難しいか。

争点その1 契約時には平面図しかなく設計図書がなかった。現状はその平面図には合致している。しかし、建築確認申請図で筋交いが入っているべきところに筋交いが入っていないなど現状は建築確認申請図とは合致していない。もっとも、施主は契約時には建築確認申請図は見ておらず、あとから建物引渡時にもらっただけだった。その場合に、建築確認申請図どおりに施工することが契約内容だったと言えるのだろうか。建築確認申請図を交付した以上は、その通り施工したことを保証しているというべきなのだろうか。

争点その2 施工は工務店が行っており、契約上の施工業者は現実には施工していない。いわゆる名義貸し。実際に施工した工務店も、設計監理をした建築士も倒産して行方不明。その場合に、名義貸しをした施工業者が全責任を負うのだろうか。

争点その3 契約時の建築基準と現時点の建築基準が異なる場合に、現時点の建築基準に照らして工事に瑕疵があると言えるのだろうか。木造2階建ての建物につき、あえて構造計算をすると、現時点での法令の要求する壁量を満たしておらず、大地震の時に危険があるという鑑定結果が出ているが、契約当時は、そのような基準が確立していなかった。当時は、筋交いの金物の技術も確立していなかったし、とりあえずシングルでも筋交いが入っていれば良かった。しかし、当時と言えども、安全な建物を作るべきことは現在と変わらない。そのときに瑕疵があると言えるのだろうか。

施工業者の常識と消費者たる施主の要求水準のずれを背景として、施工業者に対する不信があるときに、それが鑑定結果によって裏付けられると、調停のように白黒をはっきりつけない解決は困難になる。訴訟のように施主に鑑定を求める前に、調停委員会が現地に赴いて見ていれば、もしかすると良かったのかもしれない。もっとも、そのときは、当面の問題は解決しても、耐震性に問題があるという問題点には目を伏せたまま終わったのだろうが。耐震性の問題は、当時の技術水準、契約水準に照らすとやむを得ず、施工業者にのみ責任を問うことはできないのではないか。より安全な家を、消費者もさらに追加負担をして一緒に作り上げていくということではないのだろうか。もっとも、これは調停のぬるま湯に浸りすぎて消費者利益を無視していると言われるのかもしれない。

投稿者:ゆかわat 17 :43| 日記 | コメント(0 ) | トラックバック(0 )

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